東京ホームタウンプロジェクトで実感した「誰に何を伝えるか」を見極める大切さ

誰に向けて発信するか、そしてその人に何が伝わればいいのかを見極める大切さを実感した例として、サービスグラントで東京ホームタウンプロジェクトの「大田区社会福祉法人協議会」のパンフレットをデザインした時の体験をご紹介したいと思います。

「サービスグラント」と「東京ホームタウンプロジェクト」とは?

サービスグラントは、非営利組織の支援のためにプロボノプロジェクトを立ち上げ、普段はビジネスの現場で働く人と非営利団体をつなぎ、社会課題解決を目指す認定NPO法人です。

居住地の杉並区では、個人でプロボノのようなこともしていたのですが、チームでプロジェクトを進めることを経験してみたくて登録しました。

デザインに限らず、業務改善や情報発信など様々な支援プロジェクトがあります。

東京ホームタウンプロジェクトは、サービスグラントと東京都福祉保健局が協働で行う取組で、「いくつになっても、いきいきと暮らせるまちをつくる」をスローガンとするプロジェクトです。

「福祉」とは普段接点のない人たちが、東京都各地の地域福祉課題の解決を目指します。

サービスグラントが窓口だったので、気づかぬうちにいつの間にか東京ホームタウンプロジェクトに参加していました笑。

2017年8月から関わることになったこのプロジェクトには、当初半年の予定を大幅に超えて、1年にわたり関わりました。

その大きな理由は、「誰に何を伝えるのか」の整理にじっくり時間をかけたことです。

大田区社会福祉法人協議会って?

大田区社会福祉法人協議会(以後「法人協議会」)」は、2016年の社会福祉法改正を大きなきっかけとし、東京都大田区にある社会福祉法人が、法人同士のつながりを作り、ノウハウの共有や連携を図ることで地域の社会課題の解決や、地域に住む人の社会参加の機会を増やすために設立されました。

ざっくり言うと、「福祉事業者同士つながって社会課題に取り組もう!」ということです。

詳しくは、こちらにプロジェクト発足から完成までの流れが分かりやすくまとまっています。

この活動のビジョンや活動内容や意義を、住民の方々に伝え、社会福祉法人関係者の皆さん自身にも改めて価値を再認識してもらえるパンフレットの制作が、僕たちのチームの役割でした。

事前にサービスグラントスタッフによって詳細なヒアリングが行われ、達成するべき課題やパンフレットを作るまでをゴールとすることは決まっていました。(このヒアリング自体の精度もとても高いものでした)

それを達成するためにチームが組まれ、僕もデザイナーとして立候補。参加することになりました。

始まりから完成まで

チーム顔合わせの数日後、チームメンバーで大田区を訪れ、法人協議会の中心になっている幹事法人の皆さんとキックオフミーティングをし、後日、チームのマーケッターが参加法人の皆さんにアンケートを実施したり、いくつかの活動現場の見学や体験、ヒアリングを実施しました。

(見学やヒアリングに僕も立ち会いたかったのですが、結局一度も参加できず。。今思うともったいなかったです)

複数の法人さんへのヒアリングや日程調整の必要もあり、この段階で半年を要しました。

その結果を踏まえて、マーケティング提案を行いました。

つまり、ヒアリングやアンケートの結果を踏まえて、どんなパンフレットにするのかを提案しました。

この提案の中で特に重要だったのは、パンフレットの目的が住民のみなさんに向けてのものではなく、参加している団体関係者の方々に向けてものに優先順位が変更になったことです。

「誰に向けて発信するか」の「誰」のところが変わりました。

なぜなら、アンケート、ヒアリングの結果、法人協議会の登録団体同士が実際に連携して一緒に動いていくためには、登録団体同士がコミュニケーションをより密にとり、法人協議会の意義やあるべき姿が共有される必要があると分かったからです。

「住民のみなさんに向けて、法人協議会の活動意義を伝える」ものから、

「法人協議会の団体関係者(職員の方等)に向けて、法人協議会の意義やあるべき姿を伝える」ものになりました。

その提案を幹事法人の皆さんにも納得していただき、それを踏まえてようやくパンフレットのデザイン段階に入りました。

パンフレットの内容も、登録団体同士の連携やコミュニケーションをどうすれば深められるかに注力し、単なる団体の紹介に終わらない、法人協議会の意義やあるべき姿や、法人同士が連携した成功事例を載せることに決まりました。

「何を伝えるか」の「何を」も課題が見えたおかげで、このように決めることできました。

さらに、幹事法人が手分けして、参加法人に直接意見を伺う機会を積極的に作ることで、パンフレットを作るプロセス自体を接点作りの機会にし、それによって法人同士のコミュニケーションが増え、つながりが強くなっていきました。

そのプロセスのおかげで、登録団体が複数増加するなど、すごい効果がありました。

元々の予定通り、ただパンフレットを作るだけでは絶対にこうはならなかったはずです。

マーケティングメンバーが丁寧に幹事法人と参加団体のヒアリングをしたことで、ただ参加団体を一覧にして紹介するパンフレットではなく、団体同士がより連携できるためのパンフレットになり、その制作プロセス自体も連携の手段となったことで、そもそもの法人協議会の目的「法人同士のつながりを作り、ノウハウの共有や連携を図ることで地域の社会課題の解決や、地域に住む人の社会参加の機会を増やす」に大きく前進することができました。

こういう経験は、仕事でもしたことがなかったので印象に残っています。

この時の実績で、サービスグラントのラジオ番組にチームメンバーと一緒に出た様子が、こちらのアーカイブで聞くことができます。

よろしければ聞いてみてください。

また、法人協議会さんのサイトで、完成したパンフレットを見ることができます。

ちなみに、今回のプロジェクトはデザイナーがふたりだったので、それも個人的には新鮮で刺激的な経験でした。

ここまでのマーケティング調査をする時間とスキルは僕にはありませんが、「誰に何を伝えるか」をしっかり把握してデザインする大切さを、改めて実感したいい経験になりました。

これを読んでくださった皆さんも、何かを発信する際には、その「目的」と、そのために「誰に何を伝えるか」を見極めるように意識すると、精度の高い発信ができると思います。