比較して見る「福祉の求人」ーかっちりデザインとやさしいデザインの違いとその理由

介護は科学」のチラシと「福祉ライブカフェ」のチラシ。

どちらも福祉分野の求人に関わるチラシのデザインなのですが、最終的にはけっこう違うビジュアルにデザインしています。

今回は、そうなった理由を二つのチラシを比較しながら、解説していきたいと思います。

介護は科学のA4チラシ

福祉ライブカフェのA4チラシ

結論!

まず結論をざっくりひと言で言うと、情報を届けたい相手と、届けたい内容が違うからです。

また、チラシを目にする状況も違います。

つまり目的が違うので、デザインも違います。

「介護は科学」は高校生が対象で、将来の進路を考え始める学生さんに、福祉(主に介護)の仕事に興味関心を持ってもらいたいという思いで制作されました。

福祉分野で求人と言うと、「やさしさ」「思いやり」「笑顔」のような感情面の充実感をアピールする広告が多いですが、最初の打ち合わせで、そういった感情面ではなく「現場の工夫」や「ちゃんと理由のある科学的な内容」を主題としてアピールし、「クリエイティブなおもしろさ」を伝えたいと聞き、とても面白いアプローチだと思いました。

ですので、ビジュアルも科学的な印象になるように科学を感じさせるモチーフを入れ、学生さんに現場の科学的な工夫を想像してもらえるように、「問い」が入り口になるデザインにしました。

色味も科学的なイメージから、白衣や研究所を思わせるような白と黒とグレー、そこにパキッとした色を使用しました。

対して、「福祉ライブカフェ」の方は、既に福祉分野に進路を決めている就職活動を控えた大学生や専門学生の皆さんに、カフェのようにリラックスしながら様々な福祉法人の今のことを知ってもらい、つながってもらう就活イベントの告知のためのチラシです。

リラックスして参加してほしいという願いから、柔らかく親しみやすいビジュアルにしようと思いました。

ですので、色使いやモチーフ、フォントや写真選びもその観点から選びました。

色はサーモンピンクを基調とした暖色でまとめ、文字部分は茶色や青紫にして、柔らかい色使いにしました。

カフェということで分かりやすく、コーヒーカップとスプーンをモチーフに、リラックスできるイベントだということがひと目で分かるようにしました。

まとめ!

お読みいただいたように、届けたい対象、届けたい内容が違えば、選ぶ写真やフォント、テキスト、色など、必然的に変わってきます。

また、対象となる人たちが、どこでどんなふうにチラシを目にするのか、配布方法でもデザインは変わります。

今回で言うと、「介護は科学」の方は高校に社協の方が赴いて説明されることが想定されましたので、「ちょっと考えてみてください」とお話をしながら高校生の皆さんが手に持っているところを想像し、まずは答えを見る前に考えてもらえるデザインにしたいと思いました。

「ライブカフェ」の方は、ポスターも同時進行で進めており、各大学や専門学校に貼り出すということでした。ですので、遠目でもイベント名やイベントの特徴が伝わってほしいというのもコーヒーカップをモチーフとして選んだ理由です。

このような、一つ一つの細かい積み重ねが、届けたい人に伝わるデザインに近づくと考えています。

講座やイベントのことを住民の方に知らせたい、と漠然とデザインを考えるより、具体的にどんな人にどんなことを知って欲しいのか?を明確にできると、届く可能性が高くなる言い方、伝え方やデザインを考えやすくなり、迷った時もそれを基準にして判断しやすくなります。

届けたい人はどんな人なのか、どんなことに悩んでいて、どんな生活をしているのか、その人にはどんな言葉で、どんな伝え方をすると伝わりそうか、一つ深く考えてみるといいかもしれません。